言葉のあや

先日、とても感心させられる言葉を耳にしました。
「頑固で自分の意志を曲げないワガママさが他人を傷つけトラブルを起こすので直せ」と言うような内容を、こんな言葉で相手に伝えていたのです。
「『水清ければ魚住まず』と言う言葉があるように、多少汚れがあった方がプランクトンが増えて魚も住めようになる。だから、人に対してもう少し情状酌量の心を持てば、人も生きやすいし、自分も生きやすい。」 (テレビ番組「オーラの泉」で美輪明宏氏の言葉)
言葉の中に「頑固」「意志を曲げない」「ワガママ」と言った言葉が一切登場していません。
さらに、他人を傷つけトラブルを起こすので直せと言う意味合いは、「(そうすれば)人も生きやすいし、自分も生きやすい。」に置き換わっています。

欠点を指摘し、それに気付かせ悟らせるために、その相手に向かって話した言葉の中に「欠点を示す語句」がひとつも入っていなかった事に私は驚きました。
「自分の欠点を直せ」と上から押し付けられるのではなく、「自分の特性を変えればもっと良くなる」と尊重された上で提案されています。
言われた側にしてみればプラス的な要素として素直に受け入れる事が出来るでしょう。
なんて素敵な表現の仕方なのだろうと感銘を受けました。

日本語は微妙なニュアンスを表現する言葉が一杯あります。
その上、慣用句やことわざ、四字熟語など短くて的確な「例え話」が物凄くたくさんあります。
私自身もボキャブラリーが貧相なので偉そうな事は言えませんが^_^;、日本語は「伝えたい内容」をいろんな形で文章や言葉に出来る多彩さがあります。

対人関係において、他人への助言や欠点の指摘、叱責や説教は大変難しですね。
本人が薄々気付いている欠点やマイナスポイントをストレートに指摘し、「直した方がいい」と言うとほぼ間違いなく反発心を持つでしょう。
言った側は、直した方が本人のためだと思って言ってあげたのに、それで怒られると不愉快になります。
こんな感じでお互いの関係が一時的にまずくなると言いたくても言えなくなってしまいますね。
そんな時、先ほどのような表現の仕方が出来ればどんなに良い事でしょう。

表現の仕方が陳腐で恐縮ですが^_^;例えば
「不細工な顔」なら「個性的な表情」、「デブでだらしなさそう」なら「ふくよかでおおらかそう」、「無愛想」なら「自分に正直すぎる」とか「人に対して慎重な所がある」、「大雑把でルーズ」なら「豪快で細かい事を気にしない」と言った感じで言葉を変える事が出来ますね。
モテない男性に対してその原因を友人が助言してあける時
「オマエは女性とまともに話せないからモテないんだ。」と言われると、ちょっと凹むかも知れません。
それに対して「女性ともっと話をすればオマエの良さを気付いてもらえるんじゃないか。」と言われれば、俄然やる気が出るかも知れません。
若干ニュアンスが変わりますが、反発されたり落ち込んだり、言葉の中に意図しない悪意を感じられるより、前向きに受け入れてくれるならその方がより相手に真意が伝わると言えるでしょう。

私も日頃から言葉に対するアンテナを張って語彙を増やし、相手を尊重する心を持って話が出来ればと思いました。
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