対処能力・その3〜2種類のタイプ〜

これまで、ストレッサーと「認知的評価」についてご紹介しました。
ようやくこの連載の本題に入ります。(読んでない方はその1から読んで下さいね。)

ストレッサーの二次的評価は、その個人が持つストレス対処能力が関係しており、この能力を高める事が重要、と心理学者ラザルスは説いています。
ストレス対処能力は、一般的に「(ストレス)コーピング・スキル」と言われています。
ラザルスは、コーピング・スキルは大きく分けると2種類のタイプがあるとしています。

・解決方法を考えたり、解決手順の計画を立てる
・その出来事や状況について詳しく調べたり、経験者や事情通から詳しく話を聞く
・問題の原因を考え、問題解決に向かって積極的に行動する
・他の解決方法を探し、最もよい方法で行動する

・誰かに話を聞いてもらったり、知人に愚痴を聞いてもらう
・気晴らしやリラックス出来る趣味や運動をする
・問題解決をあきらめてくよくよ考えるの辞め、気にしないようにする
・その出来事や状況についてポジティヴな捉え方や楽観的に考える

最初の4項目が「問題焦点型」といわれる行動で、問題に対して原因追求・情報収集などで解決しようとするように、ストレッサーとなる状況そのものを変化させようとする行動で、ストレスを低減させる事が出来ます。
後の4項目が「情動焦点型」といわれる行動で、気晴らしや気分転換、静観、回避などでストレッサーの捉え方を変化させようとする行動で、解決出来ないような問題の場合に用いられる傾向があります。
実際にはどちらか一方と言うよりは相互が複雑に影響しあっています。

例えば、会社員Aさんが経理部から営業部への異動を言い渡されたとします。
Aさんは計算は得意でも、接客や売り込みは物凄く苦手なタイプで、とても強いストレスを感じました。
この後、Aさんは同期入社の営業部の同僚Bさんを誘い☆呑みに行きました。
☆愚痴をBさんに聞いてもらいつつ、◎営業の業務内容を詳しく聞くうちに、Aさんはなんとなく気分が軽くなったのです。
そして、◎Bさんに協力を要請し快諾してもらうとテンションが上がり、その後☆カラオケで2時間唄いまくり帰路につきました。
「不安だけどやってやれない事ないかな。☆いろいろな経験をしてスキルを高めれば昇進するかも知れないしな。それに今の会社よりもっと高給な所に転職できるかも知れないし。ま、嫌だけど頑張るか。」
Aさんはこんな風に考えながら眠りにつきました。

◎は問題焦点型、☆は情動焦点型です。
Aさんは両方のコーピング・スキルを使い、自分なりにストレスを軽減する事が出来ました。
営業への異動を言い渡された後、もしAさんが憂うつな気分のままふさぎこみ、まっすぐ家に帰ったならばどうでしょう。
ストレス軽減どころかネガティヴな感情に支配され、さらに強いストレスを感じている事でしょう。
食事も美味しく食べられず、なかなか寝付けなかったかも知れませんし、胃が痛くなったも知れませんね。

次回は連載最後のまとめです。
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