キモイの肝・その1
昨今のいじめ問題で必ずといって良いほど耳にする言葉が「キモイ」です。
「気持ち悪い」の省略形である事は容易に想像出来ますが、キモイと言う言葉には本来の意味以外にもいろんな意味が含まれているようです。
そこで今回は「キモイ」を考察してみようと思います。
「キモイ」印象を受ける人とは一体どんな人でしょうか。
多数の意見としては、不潔、だらしない、暗い(陰湿)と言った要素があります。
肩にフケが積もっていて髪の毛はコテコテ、洋服は薄汚れていて手の爪先は黒い、なんて言う人は誰が見ても不潔で気持ち悪くて強い不快感を感じますよね。(^_^;)
また、常に曇った表情で三白眼でうつむいてボソボソ喋る人は、根暗で陰湿な印象を受けますので不快になります。
しかし、キモイと言われている人の全てがこのような性質を持ち合わせている訳ではありません。
何を根拠にキモイと言われるのでしょうか。
五感を使って感じ取った情報が何であるか判断したり解釈する事を「認知」と言います。
認知には自分自身の過去の経験や知識などの情報から出来た「自分仕様の心のフィルター」が関与しています。
簡単に言えば「これはこうだろう」「これはこうしたい」「これはこういう事だ」と判断・解釈・推測する心の動きで物事を見ているのです。
認知と実際の状況が異なった場合、つまり認知と現実に矛盾が生じると、無意識的に強い不快感や緊張や不安を感じます。
これは「認知的不協和」と呼ばれており、認知的不協和の状態は心がとても不安定でとにかく不快です。
事実を変える事は現実的になかなか出来ませんので、多くは心の中で何とか折り合いをつけようとします。
その時無意識に自分を守るため、考えを変化させたり、認知に他の理由付けをしたり、問題のすり替えや責任転嫁などが行われる傾向があります。
学生のAさんは同じクラスの同姓Bさんを毛嫌いし、自分の方がBさんより何もかも優れていると思っていました。
ある日Aさんは、自分が絶対欲しいと思っていたブランド品をBさんが学校に持って来て皆に見せびらかしているのを目撃しました。
自分より劣っているBさんが、自分にこそふさわしいブランド品を、よりによって自分よりも先に持っていたのです。
自分の認知(自分が持つモノ)と起った事実(Bさんが持っていた)に矛盾が生じて、強い不快感を抱きます。
Aさんがそのブランド品を持っていない事にするのは今更無理ですし、奪い取る訳にもいかないでしょう。
そうなると心の中で折り合いをつけるために、その不快感の原因は「Bさんのせい」と理由をすり替えます。
こんな時に最適な言葉が「キモイ」です。
「Aがブランド品持ってるなんてキモイ」「(そんなの持ってる)Aはキモイ」と言った言葉で、自分の心の中の矛盾に折り合いをつける訳です。
キモイの正体は恐らくこのような「不快感」なのではないかと考えられます。
先の不潔な人や根暗な人がキモイと言われるのは、多くの人が不潔や根暗に対してネガティヴな認知を持っているからでしょう。
それ以外にも、ある人達の一方的な都合だけで「キモイ」と呼ばれてしまう事があるのも事実なのです。
次回に続きます。
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