ピーターパンとウエンディ・その1
前回はシンデレラのお話でしたが、今回はピーターパンのお話です。
ピーターパンは、イギリスの劇作家・小説家のジェームズ・マシュー・バリの著作です。
興味深いのは、元々1902年に著した小説の一部からピーターパンだけを抜き出し新たに劇作品にし、それがまた小説となり、別のエピソードに書き換えられた小説になっています。
私達が知っているディズニー映画でお馴染みのピーターパンのお話は1912年に書かれた「ピーターパンとウェンディ」が原作です。
ピーターパンは大人になりたがらない青年(少年)でネバーランドに住んでいます。
彼を社会的に見れば、生意気で無礼で尊大、依存的で無責任、自己中心的、軽薄で軽率、ずる賢く反抗的で残酷、社会性を超えた価値観と言った性格傾向になるでしょうか。
大人の代表である敵役のフック船長は、ピーターパンによって片腕をワニの餌食にされた事よりも彼の生意気で尊大な所が腹立たしいと語っています。
アメリカの心理学者ダン・カイリーが1983年にピーターパン・シンドローム(Peter Pan Syndrome)を提唱しました。
ピーターパン・シンドロームとは、主に若い男性が大人への成長或いは成熟を拒否し「いつまでも子供のままでいたい」と言う心理傾向や性質、社会現象などを指して使用される言葉です。
特徴としては、感情が乏しい、優柔不断で決定を先延ばしにする、現実から逃避する、軽率で軽薄、他人に対して無関心、自己中心的、自尊心が強いが依存的、無責任などの心理的な傾向があります。
社会的な責任感がほとんどないため、就職などの社会参加をしないか社会参加をしていても自分の役割や責任を果たせず社会適応が出来ないタイプが多いです。
以前ご紹介したシュガー社員(第242回「砂糖社員」)はもとより、結婚しても給料を家庭に入れず全て自分の趣味に使うとか、店を任された途端無断欠勤をする、子供が出来て経済的な負担が増える事が解っているのに突然仕事を辞めて就職しない、などと言った社会的に見れば呆れるような行動をとる場合も少なくありません。
また、性的なコンプレックスを持つ傾向があり健全な恋愛関係をなかなか築けない場合や、母親や父親に対する強いコンプレックスを持っている場合もあります。
ピーターパン・シンドロームになる要因として、親の過保護・過干渉が挙げられます。
カイリーは典型例として「中流〜上流家庭でホワイトカラーの父と専業主婦の母の間に生まれた長男で、経済的に親に依存しており、高学歴だが努力を怠るため転職を繰り返す」と言った内容を述べています。
同じような意味を持つ言葉で「モラトリアム」があります。
モラトリアムとは元々ラテン語の「遅らせる」と言う言葉が語源で、支払猶予や製造・使用・実施などの一時停止として使われている言葉ですが、日本で一般的にこの言葉が認知されたのは1977年に心理学者の小此木啓吾氏が発表した著書「モラトリアム人間の時代」でした。
モラトリアム人間とは、社会人になる年齢に達していても社会人としての義務や責任を先延ばしにして社会に同化できない、或いはしない若者を指しています。
当時はマスコミを通して、小此木氏の思惑から離れ言葉だけが一人歩きし、今の否定的な意味合いでのニートに近い印象で使われた言葉です。
大人になる事や社会生活に入る事への責任回避はピーターパン・シンドロームと重なる部分があります。
小此木氏は著書の中でモラトリアム人間を「精神病理現象ではなく、普遍的な社会心理現象として観察されるようになった」と述べています。
同様に、現代は両親の経済的な余裕や少子化から過保護・過干渉に陥りやすい傾向があり、ピーターパン・シンドロームの男性が増えていると言われています。
次回に続きます。
[1]週刊ココロコラム
[2]TOPに戻る