ピーターパンとウエンディ・その3
「ウエンディ・ジレンマ」は、ピーターパン・シンドロームと同じく心理学者ダン・カイリーが提唱しました。
そのカイリー氏がウェンディー・ジレンマの解消として「ティンカーベルヘの変身」を挙げています。
ティンカーベル(以降ティンク)はピーター・パンのお話に出てくる妖精で、性格はとにかく生意気で傲慢、おしゃまな気取り屋でいたずら好き、ウエンディ曰く「小さくて勝手気ままな子」です。
別の視点から見れば、ティンクは自分の価値観や意志をしっかり持っていると言えます。
大好きなピーターに対して甘える事も頼る事もせず、ティンク自身の意志で行動した結果ピーターを怒らせる事もありました。
しかし、ピーターが知らずに毒を飲みそうになった時、飲ませまいとして自ら毒を飲んでいます。
そんなティンクに変身しろとはどう言う事なのでしょうか。
ウェンディー・ジレンマを解消するティンカーベルヘの変身は以下の8項目を挙げています。
・相手を憐れんだり同情せずギブ&テイク(与えたり受け取ったり)する関係を築く
・何事も自分が悪い、自分の責任だと考えず、相手に共感する
・互いに支えあっている関係と言う信頼感を持つ
・相手と自分はそれぞれ別の個性だから趣味嗜好をはじめとした個人の世界を認める。無理に合わせない
・自分も相手も対等に意見を述べる事が出来、意見が異なっていても一方的に否定しない
・互いの関係が上手く行かなくてもその事実を受け入れる。互いの葛藤や対立の全てを追求したり解決しようとしない
・夫婦でも恋人同士だった頃の気持ちを忘れない
・2人は運命の赤い糸で結ばれているが縛られているのではない
これらの考え方や行動を実践すれば、不幸になる可能性が濃厚な「ウエンディ」と「ピーター」の関係性を変化させ、ウェンディー・ジレンマを解消する事が出来ると説いています。
「ティンカーベルヘの変身」は、ティンクのように自らの意志を持ち、相手との関係性を「個」対「個」にする事がポイントなのかも知れません。
また、カイリー氏はピーターパン・シンドロームの予防と治療のための「躾の基本原則10箇条」も発表しています。
どちらかと言うと我が子が大きくなった時にピーターパン・シンドロームにしないための躾のようなニュアンスですが、ピーターパン・シンドロームの特徴を持つ大人の男性との関係性にも有益ですので合わせてご紹介します。
1.コミュニケーションはあくまで予防策にしか過ぎない。解決には行動する事が必要
2.「曲げていい規則」と「曲げてはいけない規則」がある
3.子供が「自分の役目」をちゃんと行っている限り親は干渉しない
4.上手な叱り方で素早く罰すれば繰り返さなくて済む
5.子供のもっともな不満に耳を傾ける
6.理屈に適った制限と理性的な規律を与えれば、子供は自我と自尊心を身に付ける
7.仲間の圧力に屈しないように、親は信念を持って子供を導く
8.子供は大人が思う以上に強さと想像力を持っているので子供のやり方に目くじらを立てるより楽しむゆとりが大切
9.家族全員で一緒に働いたり遊んだりする
10.お説教ではなく身を持って示す。不言実行こそ最善の教育
カイリー氏の「ピーターパン・シンドローム」と「ウエンディ・ジレンマ」を日本に紹介したのは、「モラトリアム人間」を提唱した小此木啓吾氏です。
小此木は、モラトリアム人間は病理的なものでも否定的なモラトリアム心理でもなく、現代人一般の「社会的性格」と述べています。
社会的性格とは、同じ集団に属する人々の共通する社会的役割や生活様式を通じて出来上がった性格の事で、男(女)らしさや職人気質や国民性なども社会的性格です。
もしかすると、「ピーターパン」も「ウエンディ」も「シンデレラ」も、現代社会が作り上げた典型的な性格の類なのかも知れませんね。
[1]週刊ココロコラム
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