人の距離

昨年から新たに劇場化されているアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」は、私も大好きな作品です。
今回はエヴァンゲリオンのテレビシリーズのある会話をご紹介します。(エヴァ好きには既に有名ですが^_^;)

内向的な主人公・碇シンジの保護者代わりとなった葛城ミサトと、仲間の赤木リツコとの電話での会話(「第参話・鳴らない、電話」より)
ミサト「あいつ、ひょっとして友達いないんじゃないかしら?」
リツコ「シンジ君って、どうも友達を作るのに不向きな性格かも知れないわね。ヤマアラシのジレンマの話って知ってる?」 ミサト「ヤマアラシ?あのトゲトゲの?」
リツコ「ヤマアラシの場合、相手に自分の温もりを伝えたいと思っても身を寄せれば寄せるほど体中のとげでお互いを傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるわ。今のシンジ君は心のどこかで痛みに怯えて臆病になってるんでしょうね。」
ミサト「ま、そのうち気付くわよ。大人になるって事は近づいたり離れたりを繰り返して、お互いがあんまり傷つかずにすむ距離を見つけ出すって事に…」

ヤマアラシのジレンマは、ドイツの哲学者ショーペンハウエルの寓話を、心理学者フロイトが引用した経緯から心理学で取り上げられるようになりました。
ヤマアラシのジレンマは哲学で言う所の二律背反、つまり矛盾や相反する事が合理的に等しく主張されています。
その二律背反の特徴からなのか、心理学に応用されてからも「否定的な意味合い」「肯定的な意味合い」どちらにも同じように使われる事もあり、とても興味深い言葉です。

否定的な意味では、好意を持つ人と親しくなるほど互いにエゴが出てきて相手を傷つけてしまう、しかし離れると親密さが薄れてしまうと言う葛藤そのものを指します。
肯定的な意味では、先のミサトの言葉のように、(否定的な意味合いに続けて)だから近づいたり離れたりを繰り返して、互いにとってちょうど良い距離を見つける、となります。

自分と人との距離は個々のパーソナリティによって全て変わって来ます。
それは対する相手側から見ても全く同じ事が言えますので、異性・同性・年齢・それぞれの立場の別なく「わたしとあなた」の関係はオーダーメイドのように「たったひとつのもの」と言えるでしょう。
何しろたったひとつのものですからマニュアルがありませんし、あったとしても「同じ形」ではありませんので役に立ちません。
ですから、ひとつひとつの「人との距離」を適切なものにするのは、ホント難しいですね。

特定な近しい人との対人関係で何か悩みがある時は、一時的にちょっと距離を置いてみると今まで見えなかったものが見えてくるかも知れません。
まだ親密でない人や疎遠な人を思い切って誘ってみると、もしかすると新しい人間関係が出来るかも知れません。
ちょっと勇気を出して近づいたり離れたりしてみて、ちょうど良い距離を見つけられれば、その人とのつながりが今よりもっと強く大切なものになるでしょう。
[1]週刊ココロコラム
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