潔癖症・その1

私の知人に鍋料理が苦手な人がいます。
鍋料理そのものでなく、銘々の箸でつついた鍋が「汚くて」食べられないのです。
他にも、揚げ物に添えられたレモンを誰かが手で絞ると食べられませんし、ひとつの鉢を回して食べるとか、回し飲みなど絶対出来ません。

随分前に、男性がドアを開けるのに恐る恐るハンカチを持ってドアノブを触っていたのを、公共施設で目撃した事があります。
その後ドアノブを包んだハンカチで顔の汗を拭いていたのも目撃しましたが。(^_^;)

歌手のマイア・キャリーさんは、ファンと握手をする毎に除菌効果のあるウエットティッシュで手を拭いているそうです。
さらにウエットティッシュを持っていなければ「細菌が感染したら大変だから」と何があってもファンと接触しないのだそうです。

他にも、会社や学校のトイレが使えない、電車のつり革やエスカレーターの手すりが掴めない、家の隅々を除菌しないと気が済まない、等などいろいろあります。
昨今は、このような「清潔症」「潔癖病」の範疇に入るタイプの人が増えている傾向があります。
アメリカでは「プリッグ」と呼ばれ、酒やタバコはもちろん、肉やコーヒーも口にせずセックスも拒む人達が増えているのだそうです。

乱暴な言い方で表現すると、「清潔」と「不潔」を分けているのは個々の「衛生に対する観念」です。
泥の中に落ちたクッキーを食べる人はほとんどいないでしょうが、家のテーブルに落ちたクッキーは平気で食べられる人もいれば不潔で食べられない人もいますね。
また、細かい部分は個々の感覚の違いが出てきますので、先ほどのドアノブを包んだハンカチで顔の汗を拭くように、他の人から見ると「?」と思う部分や、辻褄が合わない面も出てきます。
このように、現実的(物理的)な清潔・不潔と、個々が思う清潔・不潔は必ずしも一致しないのです。

また、多くの「除菌」「抗菌」製品が溢れている事からも解るように、現代人は「清潔」への関心がどんどん強くなっているかも知れません。
除菌しなくてはと思う部分に、どれほどのバイ菌があるのか実際には解らない事がほとんどです。
バイ菌の代表格のように扱われているカビからは、ペニシリンをはじめとした医薬品や食品が生まれています。
第一、「清潔」=菌がほとんどない・「汚い」=菌だらけ、と言う解釈をすると、キノコも味噌も納豆もヨーグルトも「汚い」もののはずですよね。(^_^;)
これらも現実的(物理的)な清潔・不潔と、観念的な清潔・不潔は必ずしも一致しないと言えるでしょう。

衛生上だけでなく他人に与える印象も良くなりますので、きれい好きや清潔を心がけるのはとても良い事です。
それに、どんなに潔癖でも日常生活に支障はない、と思えるのであれば何の問題ありません。
問題は、自分の潔癖な所が日々の生活の邪魔をしている場合です。
肌が荒れるほど何度も洗わないと気が済まない、不潔で外食が出来ず会社の飲み会に参加できないなど、生活に不便さを与えたり、円滑な対人関係を築けないなどで困っている方も多くいらっしゃいます。
そんな方は、先ほどお話したように現実的(物理的)な清潔・不潔と、自分が思う清潔・不潔は必ずしも一致しない事を知り、自身の衛生観念を自分なりに考えてみると良いかも知れません。

ただ、中には「一般的な日常生活」が出来ないほど、過度な潔癖傾向に苦しんでいる方もいらっしゃいます。 詳しくは次回にお話します。
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