人を外見で判断するな・リターンズ
以前「人を外見で判断するな」(第70回)と言うコラムを掲載していますが、今回はこのお話をさらに突っ込んで考察したいと思います。
初めて会った人をさっと観察して、その人のパーソナリティを推測する事を、(社会)心理学では「印象形成」と言います。
印象形成の際に観察する時間は数秒〜数十秒程度、推論する要素の多くは視覚情報で、6割〜9割と言われています。
印象形成は、早い話が第一印象の事です。
心理学者アッシュが行った有名な実験があります。
AとBの2つのグループの人達に、特定の人物の情報を知らせました。
Aグループに知らせた情報は「知的、勤勉、衝動的、批判的、頑固、嫉妬深い」です。
Bグループに知らせた情報は「嫉妬深い、頑固、批判的、衝動的、勤勉、知的」です。
その結果、Aグループの人達は特定の人物について好印象を抱き、Bグループの人達は悪い印象を抱く傾向が見られました。
知らせた情報はA、B共に全く同じ内容ですが、その順番が異なり、Aにはプラスの情報→マイナスの情報、Bにはマイナスの情報→プラスの情報の順になっています。
この実験により、いくつかの情報があっても、最初に提示された情報が全体的な印象に大きく影響を及ぼす事が解りました。
これは「初頭効果」と呼ばれています。
初頭効果は最初に提示された情報が印象に大きな影響を与えるだけでなく、最初に形成された印象自体もそう簡単には変わりません。
第一印象が好印象だった場合、多少のマイナス要因が露呈したとしても即座に「嫌な人」の印象に変わる事はありません。
例えば、「明るくて優しい」が第一印象だった人が、他人の悪口を言っていたとしても、嫌な事でもあったのか嫌いな人なんだろうなぁと思う程度で済むでしょう。
逆に第一印象が悪い印象だった場合、多少のプラス要因を露呈したとしても即座に「良い人」の印象に変わる事はありません。
例えば、「ネクラで陰湿」が第一印象だった人が、誰かに親切にしていたとしても、何か魂胆でもあるのかと勘ぐりたくなると言った感じです。
長く接しているうちに、少しずつその人のパーソナリティが解ってきますが、それまでは第一印象が大きな先入観となります。
人によっては、どんなに長く接しても第一印象の先入観がなくならない人もいます。
第一印象はこれほどまでに大きな影響力を持っているのです。
面接の時、大事な会議や取引の時、お見合いの時など、服装や身だしなみから姿勢や表情、声のトーンまで気をつけようとします。
しかし、中には「第一印象を無理矢理良くすると自分ではなくなる。自分は自分のままで良いからこのままでいい。」と言う方もいらっしゃいます。
第一印象は「自分が思っている自分らしさ」ではなく「他人が推測するその人のパーソナリティ」です。
他人がその人を推測するための情報の多くは、大勢の人の認識や観念、つまり常識的な傾向があります。
『ギャルメイクに金髪、胸の谷間がくっきりと出たトップスに下着が見えるショートパンツ姿で街中をくわえタバコで歩いている女性』
この女性が非常に真面目で品行方正だったとしても、そのような第一印象を持ってくれる人がどれだけいるでしょうか。
「自分が人からどのように見られているか」を客観的に知り、自分自身をよく見せるように演出する事は、円滑や対人関係や社会生活を送る上で有益なテクニックと言えるでしょう。
最後に。
人から誰かを紹介してもらう時、人に誰かを紹介する時は、アッシュの実験と同じように「誰か」の情報を提示する事になるでしょう。
この時、紹介する側がどのように「誰か」の情報を提示するかによって、会う前から印象が変わってきます。
大切な人を紹介する時は、その人のプラス要素からお話すると良いでしょう。
紹介された時に余分な先入観を持たないようにするには、聞いた情報の順番を意識してみると良いかも知れませんね。
[1]週刊ココロコラム
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