おかしくない笑いの考察

おかしい時、面白い時、嬉しい時、楽しい時は誰でも自然と笑いますが、おかしくも楽しくもない時に笑う機会も案外多いです。
特に愛想笑いは、おかしくも楽しくもない時の笑いですが、人との調和を配慮しようとする日本人には多い笑いです。
それ以外にも笑いの種類はたくさんありますが、今回は印象的な笑いを2つご紹介します。

稀にこんな話し方をする方がいらっしゃいます。
「やっぱり(笑)、私はこれがいいと(笑)、と思って(笑)、お願いしようかなと(笑)。お願いしちゃって(笑)、いいかなぁ(笑)」
別段面白い話ではないのに、話の途中途中と言うか、言葉の切れ目に常に笑いがくっついているような感じの喋り方です。
このタイプの喋り方は、聞き手側にとっては不快で、特に、仕事中など真面目な場面や、真剣な話をしている時は気分を害します。
「何で笑ってるの?」と尋ねると、理由が解らなかったり、笑っている事を認識していない場合もあります。
この笑いは、愛想笑いもありますが、(会話や対人面が苦手で)自らの緊張を緩和させるための手段、不安にならないための自己防衛手段、自分の感情や内面を相手に悟られないための防御手段等、その時々や個々によって様々な理由があります。
このように様々な要因がありますが、会話やコミュニケーションに不安や緊張を覚えるタイプの方に見られやすいと言えるでしょう。
話をする場面や話す相手などでも異なるでしょうが、人によっては言葉尻に(笑)がつくこと自体が無意識の癖になっている方もいらっしゃるようです。
人から指摘されたり、何となく心当たりのある方は、一度自分の会話を録音してみると良いかも知れません。
そして、話す事よりも「人の話を聴く」に比重を置いて、自分が話す時は焦らずゆっくり喋る練習をしていくと良いでしょう。

もうひとつは、交流分析で「絞首台の笑い(Gallows transaction)」です。
なかなか恐ろしい名前ですが、割と良く見かけるものです。
自分の失敗や不幸、不利な事を話す時の笑いで、自虐的な笑いと言えるでしょう。
例えば「昨日、女房が実家に帰ってしまいましてね…とうとう離婚かも(笑)」「彼に振られちゃった(笑)」「私、子供の頃ずっといじめられてて…(笑)」等です。
自分を貶める笑いで、その場を和ませたり、相手に媚びたり取り入る手段や、自分自身の感情を押し込めるための手段にします。
また、相手が笑う事で自己価値の低さや自己否定をする自分をあらためて確認して安心する意味合いも含まれています。
このように、笑う事で自分の首をしめる(自己価値を落とす)事になる所から「絞首台の笑い」と呼ばれています。
絞首台の笑いを良くする人は、例えば、両親が不仲で家の中が殺伐としていたとか、否定的な言葉をかけられて育った、子供の頃いじめられていた等、過去に、円滑なコミュニケーションや他人の関心を引く手段として、自分を低めて笑う事を学習してしまった傾向があります。
「いや〜昨日飲み過ぎて二日酔いですわ〜(笑)」位の軽いノリの笑いならば、茶化したり照れ隠しなどで誰でも自然に出てくるかも知れません。
しかし、虐待や暴力、酷い裏切りに遭った等、笑い事では済まされないような深刻な話を、笑って話す人がもし身近にいたら、笑わずに真剣に聞いてあげて下さい。
もし、自分が辛い話を笑ってしてしまうのならば、自分の気持ちに素直になるように意識してみて下さい。
悲しい、辛い、悔しい、怒り、そんな感情を心の奥に閉じ込めているならば外に出してみて下さい。

おかしい時、面白い時、嬉しい時、楽しい時の自然な笑いは、目元から表情が動き始めます。
おかしくも楽しくもない時の笑いは、口元は笑っていても、目元は笑っていません。
笑うときには是非目も口もにこやかな表情が良いですね。
[1]週刊ココロコラム
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