共感覚

私達は当たり前ですが、目でものを見ていますね。
もっと具体的に言うと、目から入ってきた情報は脳を経由してそれが何なのかを判断しています。
脳の中にある記憶から該当するものや似たようなものを探し出し「それが何であるか」を判断しようとします。
例えば、知らない犬種の写真を見たとしても耳の形、目、鼻、口の形、体型、毛並み等から記憶の中にあるたくさんの犬の情報から判断し、それが犬である事を理解します。
つまり、目てものを見ると言う行為は結果的に脳の作業であると言えるでしょう。

2万5千人に1人の割合で「共感覚」を持った人がいると言われています。
この人達は普通の人なのですが、例えば食べ物を味わうと形を感じるとか、音を聴くと色が見える、単語を見ると色を感じる、触った物が見える等様々な例が存在します。
共通する特徴は五感で感じる感覚が他の感覚と強く結びつき、一緒に一方向に発生すると言うのです。
主に視覚と聴覚の結びつきが多いと報告されています。
スパゲッティを食べて「この料理は三角形だね。」とか音楽を聴くと「この曲は深い青だね。」と言う感覚は、私達には比喩やイメージにしか捉えられませんが、彼等は確かにそう感じているのです。

最初、心理学者達は脳内ネットワークの混線から起こる症状だと考えました。つまり「異常」と考えたのです。
しかし、研究を進めるにつれて「共感覚」そのものは人間の誰もが持っている根本的な感覚で、脳の正常な機能である事がわかって来ました。
共感覚は脳の海馬を中心に常時誰にでも起こっているプロセスですが、神経ネットワークの最終処理をする辺縁系を通過する事で共感覚は意識から失われているのだそうです。
しかし、一握りの人(共感覚者)はそれをありのままに感じてしまうのです。
元々備わっていた脳の機能が、進化の過程においてそのような処理をするようになって来たと考えられています。
脳は使わないとその機能が鈍り、果ては退化します。
便利になった現代において、生活に重要な役割を果たさないその機能が使えなくなるのは、ある意味当然なのかも知れません。

目隠しをし、指先で触っただけでそのものの色や文字等を当てると超能力者と呼ばれます。
しかしこういう人は触覚と視覚が強く結びついた共感覚を持っているかも知れませんね。
脳の機能は同じ事を繰り返し行う事で開発されます。
目隠しをして折り紙等を触り、色の感触を感じるような訓練を積み重ねれば、眠っている共感覚を呼び起こす事が出来る可能性はあります。
つまり、誰でも超能力者になれる可能性があると言う訳ですね。
[1]週刊ココロコラム
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