派遣の彼女

私の友人が経験した話です。
バイトで家電量販店の接客販売の応援に行きました。そこには他から派遣された女性も来ていました。
その派遣の彼女は、お客さんの質問に対して間違った事や直接関係ない事を次々と話し出し、お客さんはパニック、当の本人はもっとパニックに陥り、収拾が付かなくなり他の店員が替わって一から接客をするパターンが続きました。
昼過ぎに、彼女の接客を見ていられなかった隣の売り場の男性が彼女にキツイ口調で「変わって!!」と無理矢理割り込んで接客を交代したのだそうです。
その接客が終わった後、彼女がいきなり帰り支度を始めました。
友人が「どうしたの?」と尋ねると「私がここに必要ない事が解りましたから帰ります。」とかなり感情的になって答えました。
そこへ接客を交代した人が現れ、「あんた何も解らないくせに知ったかぶりしてお客さんに喋るなよ!!」と怒鳴ってきました。
すると彼女は「私は、この仕事をずっとしているので仕事内容位あなたより良く知っています。ただ、この店に来たのは2回目なので要領がつかめないだけです。」
「じゃあ、何故お客さんが尋ねてもいない事まで話するんだ。お客さん困っていたのが解らないのか?」
「私はお客様のためにいろいろ教えてあげたんです。」
「ここで扱っていない商品の話なんかしたって意味ないだろ!!それにそもそも間違ってるし。」
「他の店ではこの方法で仕事をしているんです!」
売り場で怒鳴りあい寸前になった2人を友人はおろおろしつつ、仲裁したそうです。

友人が彼女をなだめつつ、いろいろなアドバイスをしたら、平静を取り戻した彼女が今度は一変弱気になり「実は私、今悩んでるんです。この仕事向いてないから辞めようかなって・・・。」と泣きそうな顔をして打ち明けたのだそうです。

コンプレックスは誰にでもありますし、それは本人にとって他人に知られたくない自分の弱みです。
知られたくないからこそ、それを隠す「鎧(よろい)」が彼女のようにプライドになってしまうのです。
先の彼女も接客を上手く出来ない事がコンプレックスとなって、それを他人に悟られまいとして頑張った事が裏目に出ていたのだと思います。
また、自分の持っている不確かな情報が、プライドの高さのせいで「間違っている訳ない」との思い込みを呼び、「お客さんに間違った情報を伝える」事にもなってしまったのでしょうね。
もし、彼女自身が上手く接客出来ない事をみんなにさらけ出せていたならば、いろんな人からアドバイスをもらえたでしょうし、他の人と連携プレーでスムーズな接客も出来るようになれたでしょう。
そして、他の人達のアドバイスや協力を少しずつでも学習していけば、次に同じ失敗をしなくなるでしょう。
ひとつ上手く出来れば、それが自信にも繋がります。
こういったコンプレックスを自分で克服するには、まずコンプレックスをオープンにする所から始まるのではないかと私は考えています。
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